闇にまぎれて




 カムイは真面目で、向上心も高く、その心根はとても優しい性格をしている。その優しい心は、戦いに傷つき疲れた者を癒し、心に安らぎを与える。
 これまで、北の城塞にて、閉じ込められるようにして暮らしてきた無知な姫でもあったが、城塞を出て、その脚で大地を駆け始めた彼女は、見るもの全てが新しいその世界で、懸命に生きてきた。

 背筋を伸ばして、意志のこもった瞳で前を見据えて、走り続ける彼女は、とてもうつくしい。
 その身を竜に変えられるという血筋からだろうか、カムイは不思議な魅力を持っていて、彼女を快く思っていなかった者たちや、敵兵にいたるまで、その魅力と才能で次々と自身の味方に付けてきた。

 もともとは白夜王国の王女としての生まれたカムイは、幼少の頃に暗夜王国の姫として攫われて以来、ずっとこの闇の溢れる国で暮らしてきた。
 ほとんど、光の差すことのないこの国は、作物は満足に育たず、食糧難に見舞われたことも何度もあった。生きるために同国の者たちは互いを殺し合い、血で濡らした時代も中には存在していた。

 光のないこの国に育ったカムイは、たとえ自らが裏切り者と罵られようと、数々の心無い言葉を受けようとも、育った暗夜王国と共に歩んできた。

 白夜の地に脚を踏み入れたときに、何も感情が浮かばなかったというのは全くの嘘になる。突然、実母であると告げてきた女性がカムイを庇い、命を落としたときには、これまで自分が北の城塞でのうのうと暮らしてきたこと、外の世界で起こりゆく争いの数々に、憤りや怒りといった、初めての感情を味わった。
 今でも、あの時のことを思うと、胸は締め付けられるように痛むし、もっと自分に力があったなら、母のことも助けられたし、こうして暗夜と白夜が殺し合うこともなかったのではないかと思う時がある。

 しかし、暗夜王国に味方したカムイには、その選択を後悔している暇はない。
 カムイには、どうしても暗夜王国から離れられないなかった理由があったのだから。両国、どちらを選ぶか問われたあの日に見た、あの縋るような、救いを求めるような瞳を忘れられない。

 あの瞳と、カムイに差し伸べられた武器を持たない利き手。
 いっそ、懇願するかのような瞳が、いまも時々彼女の記憶の奥にちらつく。




 資料室の一角にある机に突っ伏して寝てしまっていたことにカムイが気が付いたのは、誰かに肩を叩かれた感覚を受けてからだ。
 眠る前は、机に戦術書をたくさん積み上げて、それを一冊ずつ読破していく勢いで読み始めたはずだ。
 ぱっと顔を上げたカムイの目に入ったものは、積み上げたすべてを読み終わるどころか、一冊すら読み切らないうちに眠ってしまっていたらしい。

「……カムイ、起きなさい。そんなところにいつまでも寝ていては、閉じ込められてしまうぞ」
「……マークス兄さん……はっ、わ、私、いつの間に…!」

 頭上から降りかかる、聞き慣れた兄の優しい声に、カムイは安心感を覚えながら意識を覚醒させると、慌てて身体を起こした。
 たくさんの戦術書を持ち込みながら、全然読み終わることのないそれに気が付いた兄、マークスは、ふっと口元を優しく綻ばせる。

「いつもこんな遅くまで起きているのか?」
「はい、少しでも皆の役に立ちたいですし、戦術の勉強もしたいですから……私はマークス兄さんほど剣の腕は立ちませんし、レオンさんのように頭も良くないですから…」
「そうか。だが…こんなに情報を詰め込もうとするのは、本末転倒だ。…戦術書なら、これと…これ。そしてこの本を読むといいだろう」

 カムイは剣を得手とするが、それはマークスには到底叶わない。神器ジークフリートの使い手であるマークスは、剣であればどんなものでも使いこなせる。それに対して、カムイは彼のように剣のすべてを扱えるわけではなく、彼女が持つには重くて扱えないものなどもある。まぁ、カムイには夜刀神があるからいいのだが、男女でどうしても差の付いてしまう体力差などと言ったことも考えると、カムイは頭脳といった戦術・戦略の部分でも軍に貢献したいと思うのだ。

 それゆえに、遅くまで戦術書を読もうとしたカムイだったが、リリスが作り出したこの城は、食堂や宿舎、武器屋や道具屋、錬成所に至るまで、ありとあらゆる設備が整っている。もちろん、その設備を管理するのもこの城で過ごすカムイたちの軍に属するものが交代で行っているのだが、今、カムイがいる資料室に至っては、夜間の開放は行われておらず、その時間は扉を閉鎖される。

「ありがとうございます、マークス兄さん。あとで部屋に戻ったら、大事に読ませていただきます」
「礼には及ばない。……カムイ…」
「はい?」

 マークスに言われた戦術書だけを残し、その身体に抱えて椅子から立ち上がるカムイだが、テーブルにもたれるように腰を預けていたマークスが小さくカムイの名を呼んだ。
 何か言いたげなマークスの視線に、カムイが不思議に思って机に戦術書を置き、マークスを見上げると、その瞳の色が見たこともない色をしている錯覚に陥った。
 いつもの優しい兄の瞳が、動揺しているような、苦悩しているような、そんな色をしていた。


「マークス兄さん?」


 カムイがもう一度マークスの名前を呼んだとき、二人がいた資料室の明かりが消えて、真っ暗闇におそわれた。それにカムイは驚いて、小さな声をあげる。

「あ、あれ。明かりが消えちゃいました…もう閉館の時間なんでしょうか。早く出ないと…」

 リリスの力により制御されているこの空間は、光すらも彼女が制御している。もちろん、四六時中明かりがついているはずはなく、資料室や食堂、人があまり集まることの無い場所は、夜間は明かりが消される。
 シャンデリアの明かりがないと、歩くことすら不便な暗闇のなか、カムイはあわあわとマークスのそばに寄ろうとする。だが、マークスはというと、このような暗闇に包まれたというのに、驚きひとつ見せることはない。

 カムイは夜目がきかないので、長く戦場に立つ分、兄は慣れているからなのだろうか、と思っていると、カムイは突然体勢を崩した。
 それは、カムイが転びそうになったなどという理由ではない。そばにいる兄により、カムイの華奢な身体は抱き寄せられていた。
 すぐ近くで香る兄の匂いに、カムイはただただ驚くしかない。

「に、兄さん?どうかしましたか?具合でも優れませんか?」

 急にもたれかかってきたマークスに、カムイは彼が具合でも悪くしたのかと思い心配して、後ろからカムイを抱き締めるマークスの腕に触れる。


 だが、カムイの無防備さは時に仇となる。
 マークスの手のひらがゆっくりと伸びて来て、むき出しのカムイの太ももにそっと這わされる。無骨で大きな手のひらが、カムイの肌を確認するかのような触れ方に、彼女は驚いて声を上げる。

「に、兄さん!?な、何をしてるんですかっ…!」

 鎧を軽装化するために、少し露出したその装備は、太もも、尻などといった女性の肌を感じる部分が露出している。マークスの手のひらが、カムイの太ももを揉み込むように触れ、それがやっと離れたと思ったら、背面へと移動して、露わになっている尻を撫でられた。
 さすがに、そんなことをされては、マークスに何をされようとしているのか、カムイにはわかる。
 男女の睦言のことに対しては、カムイはまったくの無知だが、何をするかなんてことは、知っている。ただ、具体的に何をするかと言われると、カムイにはわからない。

「マ、マークス兄さんっ、ど、どうしたんですか!は、離して…!」

 マークスの手のひらがカムイの太ももや尻に触れるたびに、カムイはびりりと電流のようなものが走り、それだけで立っていられそうになくなる。
 カムイが必死に抵抗し、マークスから逃げ出そうとするのだが、マークスの大きな手のひらに尻を揉みしだかれて、腰がふるえる。今までに味わったことのない初めての快感に、カムイは驚く。
 マークスに離してもらおうと懇願するも、彼の力は強く、その腕の中から逃げ出すことは叶わない。

 それどころか、真っ暗闇の中の資料室は、人が近づく気配すらないだろうし、もしかしたら鍵すらかけられているかもしれない。

「はぁ、あ、や、やめて、マークス兄さ…あ…!」
「カムイ……」

 カムイはマークスに触れられるたびに、次第に立っていることすら難しくなってきて、そのまま机の上に倒れこむ。それに乗じてだろうか、マークスもまた彼女に覆い被さるようにもたれると、カムイをその大きな身体で覆い尽くす。
 カムイは、どう考えてもおかしい状況に、逃げ出そうと試みるのだが、抑え付けられたマークスの力が強く、抜け出せない。

「兄さん、どうしたんですか!?こ、こんなこと、やめてください…!っひあぁ…!」

 カムイは抵抗しながらも、必死に声を上げるのだが、その抵抗もマークスの手のひらが動き出してしまうと、それも弱くなる。
 太ももを這う彼の手のひらが上昇していき、カムイの脚の付け根のあたりまで指が移動すると、そこをぐいぐいと押されて、カムイはそれに頼りない鳴き声をあげてしまう。
 初めて自分があげる甘ったるいその声に、カムイは驚いたが、何よりもマークスの変貌に驚き戸惑って仕方ない。

「カムイ……このように無防備な姿を晒して……男がどういう目で見るのか、知った方がいい」
「何っ……いやぁ……!」

 先ほど、マークスと話した時は、彼の様子におかしいところはなかった。至って普通の会話を交わしたと思っていたし、マークスの気に障るようなことは言っていないはずだ。
 けれど、いっそ別人になってしまったかのようなマークスに、カムイは泣き出しそうに瞳に涙を溜める。



 優しい兄は、カムイに剣と勇気を教えてくれた。皆を守る術を教えてくれた彼は、カムイにとって誇れる人である。威厳を持ち、その双眸はしっかりと前を見据えて、皆を引っ張っていく。
 カムイはそんな兄が大好きであったし、これからも兄とともに過ごして行けると思っていた。もちろん、好きだと思うのも、家族としての感情であると思っていた。これまでは。


 カムイにのしかかっていたマークスの重みが無くなって、解放されたのだと喜んだのも束の間、カムイは彼に腰を押し付けられて、むき出しの尻を再度揉まれた。ぐにぐにと形を変えて、揉みしだかれて、カムイは頼りない声をあげてしまう。
 呼吸がままならなくて、必死にもがいていると、カムイの鎧を繋ぎとめる留め具に手を掛けられて、それを一つずつ外される。
 さすがに、そこまで来ると、カムイはいよいよマークスにこれからされるであろうことに、恐怖して、声をあげられなくなる。
 いっそ、夢の中であったら良かったのに、とカムイが思うも、肌を滑るマークスの手のひらの感触がカムイの中に焼き付いて離れない。

「大人しくしていれば痛いようにはしない……大人しくしていてくれ、カムイ……」
「いや、いやです!兄さん、やめてください…!!」
「……嫌か…そうか…」
「……!」

 鎧を外されて、下に着込むシャツが露わになり、カムイはそれに激しく抵抗する。これ以上マークスのいいようにさせていたら、間違いなくカムイは彼に犯されるだろう。
 こんな、非道なことをするというのに、背後でとても悲しげにつぶやくマークスの声に、カムイの胸の奥がきゅ、と締め付けられる。
 ひるんだカムイに乗じて、マークスは彼女の胸元に手を滑らせると、たっぷりとした質量のそれに手のひらを滑らせていく。思ったよりも量のあるそれは、マークスの手に余るほどで、カムイにのしかかる彼の息が荒くなる。

「ひあぁ…!マークス、兄さんっ……あっ、あ…!」
「カムイ、カムイ……もっと、その声を聴かせてくれ…甘く鳴いて、私に懇願しろ…」
「んっ、あう…!」

 これまで、暗夜のために大地を駆ける生活をしてきたカムイは、当然ながらこのような快感など知らない。
 マークスの指先がカムイの胸の頂をかすめ、尖らせられると、カムイはびくびくと腰を震わせて、マークスに腰を突き出すような体勢をとってしまう。初めての快感に、カムイの秘部はしとどに濡れて、女としての本能を芽生えさせていた。
 腰をくねらせれば、股のあたりがぬるりと滑った感覚に、カムイは驚いた。

「いやっ……やだ、兄さん、こんなこと、だめです…!」
「強情だな……っ…そんなこと、言ってられないようにしてやる」
「!!」

 そこをマークスに与えられる快感で濡らしていると、彼の手のひらがカムイを腰を撫でて、濡れそぼったそこに指を這わされた。だれにも、触らせたことはないし、自分で自分を慰めるようなこともしたことのないカムイにとっての初めての快感は、彼女の身体にびりりと電流が走り抜けた。
 股を覆う布地の上から、隠核をこねまわされ、すり上げられた瞬間、カムイはその初めての快感に怯えた。

「いやぁっ」

 カムイはびくびくと腰を震わせて、大きな声を上げた。
 マークスの腕から逃れたいと思うのに、びりびりと快感が足の先から頭のてっぺんまでを駆け抜けて、カムイの身体から力が抜ける。
 口から零れる自分の吐息がやけに甘くて、耳を塞いでしまうほどだった。初めての感覚に耐えているらしいカムイに、マークスは瞳を細めると、彼女を追い詰めるべく、指先を擦り上げるのを早めていく。
 中途半端に開いた口から、ひときわ大きな声が漏れて、カムイの背中がびくっと震えた。

 そのままマークスに隠核を弄ばれていたときだった。カムイは自分の息が少しずつ上がってきて、どきどきと胸が高鳴ってきた。脚が震えて、立っていられない。それに気がついたマークスは、背後でふっと笑うと、カムイの耳たぶを甘く噛んだ。
 その瞬間、カムイの背はびくりとのけぞらせ、絶頂を迎えようとしていた。

「いやっ…あ、あぁぁん!」

 初めての感覚に、膝が震える。生まれて初めて強い感覚を味合わされて、カムイは絶頂にいざなわれた。
 がくがくと膝を震わせて、息も絶え絶えにカムイはため息を吐くと、その様子に背後にいるマークスが小さく笑う。

「イってしまったか……どうだ、初めての絶頂は?」
「イって……?」
「ここを、こうされると……気持ちが良くなって、それが高められると今のようになる。…どうだ、気分は…」
「はっ…あ…」

 カムイの初めての絶頂に、マークスは嬉しそうな声をあげて、カムイの隠核をすり潰す。その快感に、彼女はただただ頼りない呼気が漏れるのみだ。
 もうすっかり抵抗する力も無くなっているカムイに、マークスは瞳を細めると、カムイの鎧を外していき、股を覆う布と、彼女の秘部をつつむ下着を一緒に脱がすと、白い尻を露わにさせた。
 さすがに、そこまで来るとカムイも驚いて、じたばたと暴れようとする。それにマークスは瞳を細めると、自らの首に巻いていたタイを外して、カムイの両手首をひとつにまとめると、彼女が抵抗できないようにそこをきつく縛り上げた。

「いやっ…!やめ、やめてください…!」
「やめろ…?…ここはこんなにもとろとろで、触れて欲しいと膨れているのに?」
「ああっ…!」

 

 蜜の溢れ出すそこを掬い、それを潤滑油のようにふたたび隠核をすりつぶし、その皮を剥いて直接こね回すと、カムイの甘い声がひっきりなしに漏れた。
 マークスの愛撫にカムイはもはや逃げ出す力も無くしていた。マークスの腕の中から逃げねばならぬと思うのに、身体が動かない。
 無抵抗のカムイに、マークスはふふっと背後で笑うと、カムイの溢れる蜜を救い、その蕾を手のひらで擦り上げた。

「うっ、あっ、あ…!いやぁ…!」

 マークスの手にカムイはふたたびの絶頂に達すると、熱が少し遠ざかって、この状況に気が付いてくる。
 真夜中、義兄であるマークスにより、資料室の机に押し倒されて、犯されそうになっている。

 カムイは、マークスが大好きだ。憧れの兄と一緒に過ごせることは、カムイにとっても心地よい時間であったし、これからもその時間はたくさん訪れるものと思っていた。
 だが、あの日の優しい兄はどこへ行ったのだろうか、カムイを襲う獣のように、彼女に快感を植え付けて、その熱い塊をカムイの腰に押し付けている。
 初めての絶頂を味わったあと、ふたたびそれを迎えたカムイは、泣き出しそうに唇を強く噛んだ。唇を噛んだときの痛みが、カムイによく伝わってきた。
 夢じゃない。現実なのだ。
 思わず視界を潤ませていると、突然、カムイの身体はマークスと向き合うように回されて、暗闇の中、カムイへの欲望をたたえた瞳と目が合った。

「おまえを………抱く」
「…!や、やめてっ…マークス兄さん…!あぁ…!」

 覗き込んだマークスの瞳は、カムイが一度も見たこともない、とても冷たい瞳をしていた。
 嫌がるカムイを抑えつけながら、マークスは腕の防具を外していくと、素手になった。そうして、カムイの秘部を一撫ですると、彼女の狭いそこに指先を挿入させていく。

「ううっ…!」

 そこは、マークスによる愛撫で充分に潤っていたとはいえ、初めての異物を受け入れたそこはとても狭く、指一本だけでもカムイは苦しそうなうめき声をあげた。
 目の前のカムイは、こうして悲痛な声をあげて、苦しがっているというのに、そんな声を聴くたびに、マークスのものが熱くなっていく。
 カムイの中に指を埋め込んで、その内部をゆっくりと撫でて行く。少しずつ、少しずつ中を広げるように指先を動かしていると、彼女の腰がぴくりと動き出す。
 それに、マークスはにやりと笑うと、もう一本指を埋め込んで、膣の中を広げていく。

「あっ、やめ、やめて、マークス兄さん…!抜いて下さい…!」
「こんなに濡れているのに、やめてしまっていいのか?ほら……どんどん溢れてくる。気持ちがいいだろう……?」
「いやぁっ、あ、、あ…やめて…あんっ!」
「たくさん感じるんだ……おまえに一から教え込んでやる。ここで男を……私を咥える悦びを……!」
「や、やぁぁ…!いや、いやぁ…!」

 指先を軽く曲げて、カムイの中を探っていくと、次第にカムイはマークスの指先から逃れようと、つま先を伸ばして腰をくねらせる。それに、マークスは何かに気が付いたように瞳を細めると、彼女の腰を片手で押さえながら、内部を指先で突き上げていく。
 淡い快感がたくさん集まって、カムイの腰が跳ねる。膣の浅いところをマークスの長い指に叩かれて、意図せずカムイはそれを感じてしまい、そのまま腰をのけぞらせ達てしまう。

 目の前がちかちかと点滅して、何も考えられなくなってくる。起きたらこれも夢だったりしないだろうか。カムイがそうぼんやりとしていると、彼女のせまい入口に、マークスの太い熱が押し当てられた。

「ひっ…!!」

 それに、カムイは恐怖して身を強張らせる。しかし、カムイの腰がマークスの力強い両手に引き寄せられると、彼女の身体はマークスによって、一度に貫かれた。

「………!!!!!」

 さきほど、マークスに充分に慣らされていたとはいえ、カムイは一度も男を受け入れたことがない。
 身体をこじ開けるその痛みに、カムイは声もあげられなかった。うまく息が吸えなくて、彼女の喉からはひゅうひゅうという音が漏れる。
 凶器とも思えるそれを無理やりにカムイの中に突き立てて、奥に精を放とうと動いてくる。



 痛かったのは、心か、身体か…。

 あの優しかった兄は、どこへ行ってしまったのだろう?
 剣と勇気を教えてくれた兄は、どうして自分にこんな無体を強いたのだろうか?
 そう、朧げにカムイは考えながら、そっと意識を失った。


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