海にとける
カーテンの隙間から差し込んだ月明かりは、緊張に震えるカムイの頬をほんのりと照らしていた。
頭のてっぺんからつま先までもが心臓になってしまったような気がして、カムイは思わず胸元を抑えた。
ふぅ、と息を吐いたところで、カムイは今まで息の仕方を忘れてしまっているのではないだろうかと不安になり、やっと呼吸することを思い出してゆっくりと空気を肺に取り込んだ。
そんなカムイの様子に、彼女を後ろから抱くようにベッドに横たわっていた男、マークスがふっと微笑んだ。
「…どうした、カムイ?」
「……えっと。」
どきりと胸を高鳴らせつつ呟いた声は頼りなく、小さかった。
その華奢な肩は緊張であろうか、いつもより力が入っているようだった。
明らかにマークスを意識している様子のカムイに彼は小さく笑うと、その腕をカムイの腹に回した。
「……そんなに緊張するな。」
「…で、でも。」
触れた薄い腹から感じる彼女の鼓動は、どくどくといつもより短い間隔で脈打っていた。
カムイとマークスが婚姻の儀を上げて、二人が晴れて夫婦となったのは少し前のことで、それまでは二人こうしてともに眠りにつくことなどは全くといっていいほど無かったのだ。
今までは兄として過ごしてきた彼が男に見えるのもつい最近からのことで、カムイが知らないマークスの男の一面を見せられるたびに、手足のあたりにそわそわと落ち着かない感覚が走り、息がしづらくなってしまう。
どうにか、呼吸を、と思ってカムイが息を吸い込むと、彼女の鼻腔を優しい匂いがくすぐった。
何の匂いなのだろうと疑問に思ってカムイが鼻から深く息を吸うと、その匂いが身近にあったことに気がついた。
それに、カムイはくるりと寝返りを打ってマークスの方を向くと、その瞳を見つめた。
「……マークス兄さん、香水か何か…つけてますか?」
「うん…?いや、つけてないぞ。たまに付けることはあるが、しばらくつけてないな。」
「…そうですか…。」
「どうした?」
「え、ええと…。」
寝返りを打ったときにも香った正体を突き止めたくて、カムイはマークスに聞いてみたものの、返ってきたものは予想外の答えだった。
確かにカムイにとっては心落ち着ける匂いがして、それがマークスのものだと思ったのだ。しかし香水などをつけているわけではないということを知って、カムイは戸惑う。
マークスは、すぐ隣で横たわるカムイの白銀の髪を一房取ると、その艶やかな髪を堪能するかのように指先を滑らせる。
その行動に、カムイはびくりと驚いた様子を見せたが、それ以上触れてこないマークスに安心すると、彼の温もりを求めるように頬にその手のひらを擦り寄せた。
ここまで安心し切っているカムイに、マークスは彼女に気付かれないように苦笑すると、つい先ほどのことを思い出していた。
■
遡ることわずか一刻ほど前、自室にてうとうとと船を漕いでいたカムイは、部屋にマークスが帰ってきたことに気がつかずにいた。
「カムイ。」
カムイは、装飾の美しいチェアに腰をかけながら、器用にそのままの体勢で眠りについていた。
彼女の膝の上には本が開かれたまま乗せられていて、どうやら読書をしていた最中に寝付いてしまったようであった。
マークスはカムイを起こさないようにそっと近付くと、膝の上に乗せられていた本を取り、栞を挟んでテーブルの上に置いた。
さて、すやすやと眠る彼女をどうしようかと思い、マークスはカムイのそばに膝をついて、かくりと頭を揺らす彼女を見つめた。
いつもはまじまじと見つめるとカムイが恥ずかしがるために、こうしてゆっくりと見つめることなどは機会に恵まれないのだが、じっくりと見つめた彼女はとても美しい。
風呂にでも入った後なのだろうか、頬は血色が良く、みずみずしい唇はまるでマークスを誘っているかのようであった。
寝ているすきに口付けのひとつでもと思うのだが、マークスはカムイを何よりも大切な存在だと思っている。
彼女が嫌がるようなことはしたくはないし、無理強いをしてきたこともない。
ただ、心の奥ではそれを少し進めたいと思う気持ちもあるのだが。
「…このまま寝かせておくわけにはいかんな。」
眠るのならば、こんなところで座ったまま眠るのではなく、広いベッドでゆったりと眠った方がいいだろう。そう思ったマークスは、そっとカムイの膝の後ろと背中に腕を回すと、彼女を抱き上げた。
人一倍訓練を欠かさないカムイであったが、そんな彼女でもマークスからしたら華奢な身体をしている。
腕なんて、マークスが力を込めただけで折れてしまいそうだと思えるほどだ。
北の城塞で世間を知らぬ姫として育ってきた彼女は、すっかりその影は潜め、背筋を正し真っ直ぐ歩いて行く姿はとても美しい。
そっとカムイをベッドに横たわらせて、マークスは離れようとしたのだが、それは叶わなかった。
いつの間に掴んだのやら、カムイがマークスの服を掴んでいて、離れられなかった。
「……これは、困ったな…。」
マークスの腹のあたりの布を掴んでいたカムイに、彼は仕方がなさそうに小さなため息をつくと、なるべくカムイを起こさないようにしながら、彼もまたベッドに横になる。
カムイの自室のベッドは大きく、こうして二人で寝転んでも十分寛げるほどである。そうして、マークスは穏やかに眠るカムイを見つめて、瞳を細める。
目の前の男がどんなことを思っているかは知らず、少女はすうすうと寝息を立てている。マークスはれっきとした成人した男性で、目の前に愛しい女が無防備な姿を晒していれば、やましい気持ちを抱かないはずがない。
そっとマークスがカムイの寝顔を見てみれば、どんな夢を見ているのだろうか、とても幸せそうな顔をしていた。そのあどけない姿ですら、マークスが彼女を愛しいと思う要因の一つなのだから、仕方ない。
彼女に触れなくても、気持ちが満たされるのだから、とマークスは一人思い込むと、彼もまた瞳を閉じようとした。
「……んん…。」
しかし、腕の中にいたカムイが身じろいでゆっくりと瞳を開けると、彼女はその赤い瞳にマークスを映した。
カムイにとっては、眠りについたつもりはなかったため、目の前に現れたマークスに驚いてしまって、彼女の顔がみるみるうちに赤くなった。そのような初心な反応を間近で見てしまったマークスは、思わず笑ってしまいそうになりながらも、カムイを瞳を細めて見つめる。
「……随分と気持ち良さそうに寝ていたな。」
「……う。す、すみません…私、眠っていましたか…。」
「ああ、それはもう、ぐっすりとな。」
まだ寝起きで頭がはっきりとしないカムイは、寝返りを打とうとして、ふと自分がマークスの服を掴んでいたことに気がつく。知らず知らずのうちにしっかり握り込んでいたことに、カムイは恥ずかしそうに手のひらを離して、枕に顔を埋める。
なんとも可愛らしいことをしてくれるカムイに、マークスはため息をつきそうになった。
そうして、冒頭に戻るわけなのだが、マークスはこのままカムイと添い寝をしていて、彼女に何もしないで眠る自信が持てなかった。カムイの甘い香りをかげば、その髪に手を滑らせて触りたくなるし、華奢な腰を見れば撫でつけたくもなる。
この二人は既に夫婦で、何かが起きても不思議ではないのだが、マークスとカムイでは歳も離れていて、明らかに男を知らないであろう彼女のことを考えて、マークスは自分を律していたのだ。
何も話そうとしないマークスに、カムイは不思議に思ったのか、彼女はベッドの上でマークスのそばに身体をすり寄せる。
「マークス兄さん?」
「………カムイ。」
兄と慕っていた男から、夫になったものの、その関係は突然崩せるものでもないだろう。今だに兄と呼ぶカムイに複雑な思いを抱きながら、マークスはベッドの上に横たわる妻を見つめる。
少しだけ、彼女に触れたい、とマークスは手を伸ばして、カムイの頬に触れる。
せめて口づけだけでも、と懇願するようにカムイを見つめれば、カムイは何もわからないような、きょとんとした表情をしていた。
さすがに、それにはマークスも驚くものだが、怯むわけにはいかない。いつもとは違う様子で、マークスがカムイに覆いかぶさり、その首筋に手を這わせれば、カムイはびくりと背筋を伸ばして驚いた。
そう、その反応が見たい…と言わんばかりにマークスが瞳を細めながら、カムイの唇に自らのそれを近付けると、彼女は慌てて瞳を閉じた。
そして、マークスはカムイと唇を触れ合わせると、ただ優しく触れていく。もう少し触れたいのは事実だが、彼女を怖がらせ、男に組み敷かれるということに恐怖を植え付けさせてしまっては意味がない。
せめて、その唇を深く味合わせて欲しい、とマークスはカムイの下唇を優しく噛んでみると、案の定というか、カムイはかちこちに固まった。
「……カムイ?」
「あ、あ……え、な、なんでもないです…。」
「….…。」
その反応は無理もなかった。マークスはこれまでに、カムイに口付け以上のことを求めたことはなかったのだ。明らかに戸惑っている様子のカムイに、マークスは彼女の頬に手を触れて、じっと見つめる。
その赤い瞳は戸惑いの色を隠せず、ほんのりと揺れていて、マークスはそっと瞳を伏せる。
そして、マークスは瞳を開けてカムイの上から退くと、その隣に寝そべって彼女を抱いた。
「……もう遅い。寝るか…。」
「に、兄さん……。」
「うん……なんだ?」
マークスを呼ぶカムイの声が甘くて、思わずその背に触れたくなってしまう。しかし、マークスはどうにかカムイに抱きそうになった劣情を抑えると、なんでもなさそうな声で彼女を呼ぶ。
カムイは、恐る恐るマークスのそばに寄り、そのたくましい身体に抱きつくように収まると、マークスの胸に顔を埋めたまま、恥ずかしそうに呟く。
「……マ、マークス…兄さん。あ、あの…。」
「………うん?」
「そ、その………えっと…。」
「………。」
耳まで真っ赤にさせて、落ち着かない様子のカムイに、マークスもどこか落ち着かなくなってくる。しかし、それはカムイには見せずに、彼女の言葉をゆっくりと待ち続ける。
「…い、いつも……マークス兄さんが、私を大切にしてくれてるって、すごく…分かります……。え、えっと、その。」
「………。」
「………わ、私から言うのは、は、はしたないんじゃ、って思うんですけど……。」
「………カムイ…。」
これまでにないくらいに赤くなって、口ごもるその姿を見て、マークスは彼女が言おうとしていることに気が付いた。あわあわと泣きそうにすらなっていたカムイを制し、マークスは穏やかに笑うと、彼女の頬を撫でる。
「……私は、おまえにどうしようもなく溺れて、欲だらけの男なんだ。……そんな私でも、いいのか?」
「………。」
「……ふふ、そうか。」
これまでマークスが鋼の理性を持ち続けた理由も、何も知らないカムイを怖がらせたくなかったゆえだ。
マークスは頷いたカムイの髪を撫でると、ふたたび彼女の上にのしかかり、瞳を細める。
不安そうに見つめてくるその赤い瞳も、緊張にふるえて少しだけ空いた唇も、すがるようにシーツを掴む手ですら、愛おしいと、マークスは思う。
■
カムイを組み敷いたマークスは、彼女と唇を重ね、そのふっくらとした唇を味わっていた。
当然、口付けもマークスに教えてもらったようなもので、カムイはそわそわと落ち着かなさそうにしながら、マークスの服を掴み、この状況を受け入れようとしているようだった。
「…カムイ、そんなに緊張しなくてもいい。」
「ん……あ、…でも…。」
「ふふ、緊張してしまうか?」
「……は、はい。」
カムイの唇を割り、その奥でふるえる舌を探り当てれば、カムイは驚いたようで、びくりと背中を震わす。
そんな姿でも、マークスの熱を煽るには充分で、彼の身体はとても熱くなっていた。しかし、それを悟られないように、マークスはカムイの胸元に手を滑らせると、ようやくそこに触れていく。
「…ふっ、ふふっ…く、くすぐったい、です…。」
「……くすぐったいか。そうか。」
ずっと触れてみたかったそこは、マークスが思っていたよりもふくよかで、彼の手のひらを楽しませる。初めて男に胸を触れられたカムイは、快感というものはあまり感じられず、ただ肌の上を手がなぞっていく感覚に、身を捩らせる。
その反応も、初めてなら仕方が無い、とマークスは瞳を細めると、これから変わるであろうカムイの表情を見つめる。
服の上から胸を優しく揉みながら、そっとその頂点を探り当てると、カムイは驚いたように身を捩らせた。
「あっ……。」
「カムイ?」
「………ん、ん、ふぅ。」
マークスの手のひらが動くたびに、カムイは甘やかな声を止められず、その口からは鼻から抜けるような声が漏れる。
そう、その声が聞きたい、とマークスはカムイが纏っていたネグリジェの肩を外すと、その華奢な素肌に唇を這わせて、そこに吸い付いた。
カムイの肌に傷は絶えないが、戦場に立つために引き締まった身体をしている彼女は、とても美しい。
「……はぁ…マークス、兄さん。」
「カムイ、兄ではなく、マークスと呼んでくれ……。」
「……マ、マークス…様……。」
「そうだ……もっと私の名を呼んで欲しい……その美しい声で、私の名を…。」
「…んっ…!」
ネグリジェをするりと脱がせ、直接その肌を晒して行くと、マークスは目に焼き付けるかのようにカムイの裸体を見つめる。
マークスの手により、とがらせたその胸の頂きですら愛おしい。
初めてであるカムイを慣れさせてやりたい、とマークスは思うと、カムイと唇を触れ合わせながら、彼女が口付けに夢中になっているうちに、その下肢に手を滑らせる。
彼女の下着の上からそっと秘めたる箇所に触れてみれば、マークスの指先には濡れた感覚があった。
「…やっ……。」
しかし、当然ながらカムイはそれに身を捩らせて、マークスの手から逃げようとする。マークスを感じて、濡らしているということを、マークスには知られたくはないのだ。
「…カムイ。顔を上げてくれ…私に、その顔を見せてくれ…。」
「ふっ、う、……っ…。」
マークスの指先がカムイのそこをなぞりあげ、蕾の上を転がすように動くたびに、カムイは頼りない声を上げて、顔を紅潮させる。初めての快感にふるえるカムイに、マークスはその白銀の髪をかき分けると、彼女の耳元をなぞり、口付ける。
耳に触れられたカムイは、ぴんと脚を張ったあと、深く息を吐くと、より高い声をあげてしまう。
「…んんっ、ん…!」
顔をのけぞらせて、初めての絶頂を味わったらしいカムイに、マークスはふたたび彼女の耳たぶに口付ける。それに、カムイは小さく息を吐いた。どうやら、ここに触れられることが気に入るらしい。
カムイの喜ぶところを見つけた、と内心ほくそ笑みつつも、マークスは彼女の下着をするりと抜こうとすると、カムイは脚に力を込めて、抵抗しようとする。
「やっ……恥ずかしいっ…!」
「……それもそうか。」
カムイはほぼ裸体に近いというのに、マークスはかっちりと着込んだままだ。カムイだけ裸に剥かれるのは、恥ずかしいものもあるだろう、とマークスは思うと、首に巻いたスカーフを外し、シャツの留め金を外し、一つずつ衣服を乱していく。
まさか、マークスがそんなことをするとは思っていなかったのか、突然彼が素肌を露わにしていく光景に、カムイは固まった。恥ずかしいのならば視線を外せばいいというのに、なぜか、たくましいその身体が露わになっていく光景から、目を離せずにいた。
マークスは、鍛え抜かれた上半身を晒し、腰のベルトを外すと、黒のパンツを脚から抜いていく。
「…………。」
「………あまり見るんじゃない。」
「は!はっ……すす、すっ、す、すみません…!」
「……ははっ。」
マークスが身に纏うのは、わずかに一枚のみ、となったところで、これまでカムイの痴態に反応しきったそれがまざまざと知れてしまう。
きっと、初めて見るからなのだろう。カムイの視線がそちらに向かっていたことに、マークスは苦笑して、彼女の頭を撫でた。わざとらしいほどにあわあわとカムイが瞳を閉じたことに、マークスは嬉しそうに笑う。
瞳を閉じているカムイをいいことに、マークスは彼女の下着をするりと脱がせると、とうとう何も隠すものがなくなってしまい、カムイは泣き出しそうに彼を見上げる。
「……大丈夫。大切にしてやる。」
「…マークス様……。」
片膝を立てて、隠そうとしていたカムイだったが、その脚をゆっくりと伸ばすと、それを合図に、マークスが彼女の秘めた部分に手を差し入れた。
ゆっくりと触れたそこは、充分に潤っているように感じた。マークスは親指を使い、その蕾を押し潰すと、濡れた感覚を楽しむかのように蜜を掬い、もどかしい刺激を与えて行く。
「うっ、あ、あ……ふっ。」
親指を擦りあげる速さをあげていくと、彼女のあげる甘い声がひっきりなしに漏れていく。普段の可憐な姿はどこへやら、マークスを興奮の渦へと誘うその表情に溺れてしまう。
しとどに濡れたそこを撫でて、マークスは指先をゆっくりと埋めて行くと、初めて異物を受け入れた感覚に、息を詰まらせる。
「っう…!」
「カムイ、落ち着いて……ゆっくり息を吸うんだ。」
「…ふっ……はぁぁ。」
何も受け入れたことのないそこは、マークスの指を排除するかのように、きつく締め上げてくる。しかし、ここで慣らさなくてはカムイに苦しい思いをさせてしまう、とマークスは彼女の処女を暴いていく。
初めのうちは、なかなか快感など覚えられないだろうと思いながら、それと同時に、これから彼女に教え込みたいと思うマークスの欲求が募って行く。
指を折り曲げて、その内壁を突き上げるように探って行くと、カムイの声が切なく甘いものへと変化した。
「うっ、あ、ああぁ…!」
「カムイ、愛している……おまえと、もっとこうしていたい…。」
「あ、あっ、あ、それ、いやっ…!」
そろそろ絶頂が近いのだろうと、マークスは思うと、中を指先で突き上げながら、蕾を擦り付けて絶頂に誘う。
そうして、あっという間に上り詰めたカムイは、苦しげに呼吸を繰り返すと、熱に浮かされた瞳でマークスを見上げた。
「………その顔は、私以外に見せるなよ…。」
「へ……?」
「感じ切って、私しか見ていない、その顔は……私だけのものだ。」
「えっ、あ………はい…。」
マークスの言葉に、カムイが頷いたのを見ると、彼は自らが纏っていた下着を脱いで、何も纏わぬ姿になる。
これまでのカムイに、雄の本能を露わにさせているそれは、どうしようもなくふくらみ、くるしげであった。
それを一つ扱いて、カムイの脚を開かせると、彼女のそこに充てがわせる。
「カムイ、つらかったら、私にしがみついてもいい……入れるぞ。」
「!……うっ…!」
マークスのものがカムイの花弁を荒らし、中へと収まる感覚に、カムイは唇を噛んで耐えた。ただ、身体を開かされて、広がっていく感覚が愛おしさすら感じる。
身じろいで、ベッドの上の方へと逃げようとするカムイを抑えつつ、マークスは腰を埋めて行くと、彼女の呼吸が整うのを待ち、ゆっくりとそれを引いていく。
カムイの表情が甘くなり、頬を紅潮させるその姿を見るだけで、マークスは理性を簡単に持って行かれそうになってしまう。
あどけない少女だった彼女から、他でもないマークスの手によって女に変わっていく姿を、どうしようもなく愛おしく思いながら、マークスは息を吐いた。
■
翌朝、カムイが目を覚ますと、ベッドにはカムイただ一人しかおらず、彼女は思わずがばりと身体を起こした。
昨夜は、ずっと繋がっていなかった欲求を求めるように何度もマークスに抱かれ、女としての喜びを教え込まれた。
なのに、朝目を覚ましたら当のマークスがいないだなんて、とカムイは泣き出しそうになった。
「……マークス様ぁ…!」
昨夜、何度も告げてくれた、愛している、という言葉は間違いだったのだろうか、とカムイが寂しさを覚えていると、自室の扉が開き、会いたいと焦がれていたマークスが姿を現した。
それに、カムイはくしゃりと顔を歪めて、身体にシーツを巻き付けたまま、マークスの元へと駆け出すと、彼に飛びついた。
「カムイ!ど、どうしたんだ…。」
「……朝起きたら、マークス様がいなくて……昨日、いっぱい愛してるって言ってもらったのは、夢だったんじゃないかって思って…!」
「…………。」
カムイのその言葉に、マークスはいつも以上に眉間にしわを寄せて、カムイの腰を抱いた。
なんというか、マークスは今この場でカムイを押し倒して、昨日のように彼女を愛してしまいたい気分だった。
初めて抱かれた朝、相手がベッドの中にいなかったことに寂しさを覚えて、瞳に涙を溜めるなどとーー……。
「……夢なわけがあるか。今にも私はおまえに愛を囁いて、色々と教えてやりたいくらいだ。」
「何を教えて下さるんですか?」
「……言えるか。」
「?」
シーツを剥いでしまえば、何も身につけるものはないというのに、マークスに寄り添うこの無防備さが愛おしい。
だがせめて、一つだけ、とマークスはカムイの唇に親指でなぞると、瞳を細める。
「そうだな、一つだけ教えてやれる。そのように無防備な姿を男に晒すと、どうなるのかを……。」
「!!マ、マークス様っ…!」
マークスは、カムイの身を包むシーツをそろりと剥がしながら、にやりと微笑んだ。
しかし、昨夜のひと時に、腰を抜かしたカムイが、再びマークスに試練の時を与えるまで、あと少しの出来事であったーー…。
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