やさしいキス
*北の城塞時代のマクカム(マークス: 十五歳くらい、カムイ五歳くらい)です
長引いた戦は、拮抗した戦況が続いていた。そんな中、マークス率いる暗夜軍もかなりの苦戦を強いられたものの、辛くも勝利を収めることができた。
しかし、戦いで傷つき、心身ともに疲弊した者は、多かった。マークスが一軍を率いるようになったのは、つい最近やそこらの出来事ではなかったが、彼はまだ十五歳と、かなり年若い青年であった。
暗夜王国の中心部・クラーケンシュタイン城へと帰る道すがら、マークスはずっと無言を貫いていた。
誇り高き暗夜王国の第一王子として、軍を率いるからには、それなりの覚悟が必要になってくる。日々の研鑚をかさね、暗夜王国のためにと邁進してきたが、今回の戦はほんとうにつらく厳しいものだった。
今回の戦で失ったものは、マークスの知る限りでは、とても数えきれないほどの痛手を受けた。その中には、マークスの直属の兵たちも、名前を連ねていた。王族として、生きて治世を正さねばという思いで来たものの、やはり自分の部下を失うというものは、ひどくかなしく、どうにもやるせないものだ。
次第に降り始めた冷たい雨を浴びながら、マークスは雨除けのために着込んでいた外套のフードをたぐりよせ、それを深くかぶる。その姿は、まるで誰も傍に寄せ付けないとするようにも見えた。
いつも、暗夜王国の空は暗い。
今宵はそれが、より一層暗くさえ思える。いつもは心地よいはずの闇に畏怖してしまうほど、らしくない自分が存在していることに、マークスは強く唇を噛んだ。
マークスがクラーケンシュタイン城を目指して行軍をすすめる中、王城から離れた場所にある城塞のとある一室で、ひとりの少女がベッドの中ですやすやと眠りに就いていた。
まだあどけないその幼い少女は、これから育ちざかりといったところであろうか、たくさんの睡眠を必要とする年頃であった。
その部屋の扉の傍に、歴戦の勇士のような風格を持った騎士のような男がやってくる。男はそっと扉を開けて、少女が心地よさそうに眠っていることに安堵すると、戦場で負った傷の残る顔を、やさしげに綻ばせる。
その騎士の後ろから、青鈍色の髪を持つ少年がやってくる。少年は、何やら腕に多くの荷物を抱えながら、騎士の男を見上げる。
「どけよ、じじい。じゃまで通れないだろ」
「……ジョーカー、口の利き方は気をつけろと言ったはずだが」
「おれが仕えているのはカムイさまだけだ。ほら、じゃまだったら」
「……ふむ」
少し伸び始めて、邪魔だったのだろうか、もうじき肩に付きそうな青鈍色の髪を一つに縛り、大量のリネンを腕に抱えながら、騎士の傍を通り抜けて行った。途中、一枚だけリネンを落として行ったことに気が付いた騎士は、それに苦笑した。
ここ、北の城塞に仕える者は、彼のような歴戦の勇士のような騎士もいれば、さきほど、ジョーカーと呼ばれた少年のように、かなりの年若いものもいた。
騎士である彼、ギュンターがここに初めて来た頃は、環境はとくに粗悪で、幼い少女が暮らすにはとうてい不便なものであった。そこらが散らかっていて不衛生であったり、少女に満足に食事を与えないなどと、そういうことが横行していた。
しかし、それもだいぶ改善されてきたのか、少女も安定され始めた生活に落ち着いてきて、それを示すように、ここのところ少しだけ背が伸びていた。
もっとも、少女に満足に食事を与えなかったりした理由は、彼女の外見にあった。少女らしい愛らしい顔立ちをしているが、彼女の髪は白髪のようにすら感じてしまう白銀に、大きな朱い瞳、人とは違う、とがった耳をしていたからだ。
しかし、自分とは違うものを怖がる人間は、少女の外見に恐れおののいた。
少女がなにをしたわけでもないのに、少女から安定された衣食を取り上げて、その笑顔を奪いとった。
実際、少女を間近に感じれば、彼女はとても優しい性格で、白髪のように感じた白銀の髪だって、櫛でととのえて潤いを与えてやれば、とても美しいものだと感じた。
―――少女はこうして、まるで幽閉されるようにこの城塞を出ることを許されてはいなかったが、彼女は暗夜王国の血を継いだ少女だというのだ。
彼女の身体はよわく、北の城塞に張った結界がなくては生きることができないのだと言う。
彼女――…カムイの肩書きは、暗夜王国第二王女である。
カムイ自身はまだそれをあまり理解している様子ではなかったが、ときどき、王城から彼女のきょうだいがここに訪れていた。
特に、長兄たるマークスは、歳の離れた妹が心配のようで、ほかにも王城に暮らす妹を連れ出しては、様子を見に来ているようだった。
ずいぶんと長い眠りから目をさましたカムイは、きょろきょろとあたりを見渡して、ベッドから降りる。まだ背が低く、窓に手を伸ばそうとするが、届かない。どうやら、空の色を見ようとしているらしいのだ。
「……カムイ様、お目覚めになりましたかな。おや、どうかなさいましたか?」
「……おそと、まだくらい?」
「そうですね…朝になろうとも、暗夜王国の空は常に夜ですから…外は暗いですね」
「……ふぅん…」
カムイは光が差し込むことの無い窓を見上げてい居る。その姿に、ギュンターは瞳を細める。
この暗夜王国で、窓から光が差し込むなどと知っている国民は、限りなく少ないであろう。暗夜王国に暮らすものならば、この国の空に光が立ち込めることはないことを皆知っている。その上で、この暗夜王国に暮らしているのだ。
光が差さない大地は、やがて枯れ、その地に張った根もいのちを失っていく。そのために、国内で争いが起こったことも、真新しい出来事ではない。
しかし、この少女は、窓から光が差し込むということを、光を浴びるということを、無意識に覚えている。
この少女がここに来ることとなったきっかけを思い出しながら、ギュンターはカムイに見えないように、眉間にしわを寄せる。
そうして、カムイはしばらく窓を眺めていたが、すぐに飽きてしまったのだろうか、笑顔を浮かべながら、くるりとギュンターを振り返る。
「マークスおにいちゃんは…?」
「む…マークス様ですか。マークス様はしばらくこちらへ来られないかもしれませんぞ」
「………」
カムイにとってのマークスは、やさしい兄だ。ここに来ればいつも、絵本の読み聞かせをしてくれて、カムイが知らないことをたくさん教えてくれる。この間は暗夜王国に伝わるという物語を読み聞かせてくれた。
兄の声で紡がれる物語は、いつもその中に深く引き込まれてしまう。話を聞いているうちに、いつも眠りに就いてしまうから、出来ればずっと聞いていたいほどなのだが、いつもカムイはすぐ寝付いてしまって、朝になってマークスを困らせる。
城塞にいるギュンターにも、マークスが戦地に赴いているということは、伝わっていた。その戦況が厳しく、暗夜王国も深い痛手を負ったことをよく知っていた。
「…マークスおにいちゃん、いつくるの?」
「ふむ……だめもとで、手紙を出してみましょうか。お忙しい方ですから…来て下さるかはわかりませんが」
「ほんとう!?カムイ、いいこにしてる!」
「おお、マークス様もお喜びになるでしょうな…」
きゃあきゃあとはしゃぐカムイの傍にしゃがみこみ、ギュンターは少ししわの寄り始めたその目元に、より一層しわを寄せた。
その頃、マークスは自身が保有する居館にて、戦後の処理などを行っていた。今回の戦で失ったものは大きく、その処理にもかなりの時間を要した。無論、それは書類上のことだけではなく、兵たちの身体のこと、戦場で散った兵の家族についても、そうだった。
少し休憩を入れようかと思っていた矢先に、マークスは部下から手紙を渡されて、それを読んでいた。それは、ギュンターがカムイの願いを聞いて、記したものである。
戦場にずっと出ていたからだろうか、妹の顔をもうずっと見ていないような気すらした。
マークスには、妹が三人いる。一番歳が近いのは、第一王女であるカミラだ。彼女は、長女らしく、カムイのことや、末の姫のことを常に心配している。ただ、その愛情を妹たちに向けすぎるあまりに、もう少し歳の離れた弟が子どもながらに羨んでいることは、マークスも知っていた。
マークスにとってのきょうだいは、下に四人いる。他にも、きょうだいがいるらしいが、マークスが一度も会ったことの無い者や、彼が会う前に王家間の争いに巻き込まれて死んでしまったものもいた。
それゆえに、マークスが深くきょうだいだと思っているのは、四人だけなのである。特に、一番下の妹なんて、まだまだ幼く、このあいだ姿を見に行ったときには、わんわんと大声で泣いていたので、あやしてやろうとマークスが抱き上げたら、さきほどまでの涙はどこへいってしまったのかと不思議に思う程にすぐに泣き止み、そして、それにマークスがほっとしてベッドに下ろそうとしたら、再び泣いてしまって、ずっと妹を抱き上げていた、ということもあった。
妹や、弟はマークスにとって大切な存在だ。
ただ、北の城塞に閉じ込められるようにして暮らしている、白銀の髪を持つ妹だけは、どうしてかマークスも気にかけてしまう。
結界がないと生きられないというものなのだから、彼女はあそこから一生出ることなど出来ないのかもしれない。
暗夜王国の第一王子として生を受け、ここまで勉学や剣の修業にも励んできたマークスは、ときどき、なにかに囚われる。
書類にサインをしながら、マークスは自らの右手を自分に向けて開き、肉刺だらけになった己の手のひらを見る。
この手で、妹や弟を撫でたり、抱き上げると喜んでくれるものだったが、愛情を与えるこの手は、それと同時に、だれかに深い悲しみや絶望を与えている。この間の戦だって、そうだ。部下の多くを死なせてしまって、その家族を傷つけたのだ。部下たちに顔向けできるようにと邁進するばかりであったが、ときに、そうもいかなくなる時がある。
このままではいけないと、マークスは首を振ると、深く息を吐きだす。確かに、深い痛手を受けた。しかしそれにずっと囚われていては、前に進めない。
マークスはおもむろに立ち上がり、傍に置いていた神器・ジークフリートを手にすると、それに触れながら、すうっと深呼吸をする。
己は、誇り高き、暗夜の戦士だ。この国のために、ここに住まう民たちのために、そして――…マークスが敬愛する、父王のために。
あの偉大なる父王は、いまだにマークスは敵うと思ったことはない。父はいつも偉大だ。
そうして、気分を落ち着かせたマークスだったが、城塞から届いた手紙の返事をしなければならぬと、再び机に向かうのであった。
―――明後日、城塞に向かう。そのようなことを記して、マークスは部下にこれを城塞に届けさせるように仕向けた。
妹は、元気にしているだろうか。そんなことを思いながら。
マークスが城塞に訪れるとの知らせを受けてから、城塞は慌ただしかった。第一王子が訪れると言う事で、掃除やらなんやらを、城塞の隅に至るまでこなさなくてはならない。
それと同時に、城塞の中では、また違った理由で、使用人たちが対応に追われていた。
昨日、マークスからの手紙を受けて、それをギュンターはカムイに伝えたものだったが、うれしさのあまり、カムイがはしゃぎすぎて夕べから発熱してしまっていたのだ。
子どもがはしゃぎすぎて熱を出してしまうのは、よくあることである。しかし、やっとマークスに会えると喜んでいたカムイは、どこか落ち込んでいたようであった。
「カムイさま…お熱はどうですか?」
「……あつい…マークスおにいちゃん、くるの?」
「マークスさまは、本日来られるようです。カムイさま…おねがいですから、食事をとって、おくすりを飲んではいただけませんか?」
「…………」
カムイの介抱をしていたのは、執事見習いとして住み込みでこの城塞に仕えているジョーカーである。ジョーカーは、熱そうに湯気を立てる食事と、傍においてある薬の袋を見ながら、カムイに願う。
カムイに言っているものなのだが、ずっと、食欲がないとの一点張りで、食事を摂っていなかった。いつもにこにこと元気なカムイがぐったりとしている姿には、ジョーカーも心細そうに眉根を下げてしまう。
どうしたものかと思って肩を落としていると、不意に彼女の居室の扉が開き、何者かが足音を鳴らしながらやってきた。
その主をジョーカーが見るや否や、彼は慌てて食事を机に置いて、頭を垂れた。
「……食事は残さず食べなさいと、言っていただろう。…ん、具合が悪いのか、カムイ?」
カムイの居室にやってきたのは、他でもないマークスだった。マークスは、ジョーカーに下がれと言わんばかりに合図をすると、少年は慌てて部屋を後にした。
「マークスおにいちゃん!」
「やあ、カムイ。元気にして…はいなかったようだな。熱を出したのか?」
「……ぅ……」
カムイの大きな朱い瞳に、涙の幕が張られていく。ああ、泣いてしまいそうだ、とマークスが思った時には、その瞳からぽろぽろと涙の粒が溢れだし、カムイの頬に筋をつくった。
「ああ、責めているわけではないのだぞ。…よしよし、泣くんじゃない……せっかく久しぶりに妹の顔を見に来たのだから、泣き顔ではなく、笑顔を見せてはくれまいか?」
「っ、おにいちゃん、くるっておもったら、うれしくて、うわぁぁん!!」
「お、おお…よしよし、そんなに私に会えることを心待ちにしてくれていたのか?ほら、いい加減泣き止まないと、さらに熱が上がってしまうぞ?」
「うっく、ひっく…」
わんわんと泣きじゃくるカムイを、毛布にくるんだまま抱き上げると、マークスはその白銀の髪に頬を寄せる。腕の中で確かに生きている命に、自分がひどく安心していることに気が付く。
とくんとくんと、腕の中でカムイが生きている。その涙がマークスの衣服を濡らしても、彼は怒ることなどせず、カムイの涙を拭い続けた。
しばらくして、カムイが泣き止んだので、マークスは彼女をそっとベッドに横たわらせると、傍に置いていた食事の入った椀に手を伸ばす。カムイが泣きじゃくっているあいだにすこし冷めてしまったようだったが、まだあたたかかった。
からす麦を水とよく煮込んだそれは、カムイにも食べやすいものだろう。
「ほら…カムイ、全部でなくてもいいから、食べなさい」
「うん……」
「いい子だ…さぁ、もう一口」
マークスの手からもぐもぐと食事を摂るカムイに、彼は思わず瞳を細める。こうして、彼女が健やかに成長してくれれば、兄としてそれに勝るほど嬉しいものはない。
ゆっくりと時間をかけてではあったが、すべて食べ終わったカムイの背中をさすってあやしていると、カムイはぱぁぁっと笑顔を浮かべて、マークスの手のひらを握る。
「カムイのおそばにいてくれて…ありがとう!マークスおにいちゃん!」
「……カムイ」
その笑顔と、声に救われたと思ったのは、いったいつからだろう。自分では吹っ切れたつもりであったと思っても、マークスは先の戦争をことを思い出し、妹の前ながら、唇を噛み締めた。
「おにいちゃん?」
妹の前であるからと、マークスはこらえようとしたが、それでも彼の瞳がわずかに潤んでいく。
いつもやさしい兄の様子がどこかおかしいことに、カムイも気が付いたのだろうか、ちいさな身体を起こし、マークスの腕の中にもぐりこもうと、ベッドの上に立ち上がり、傍に置いてある椅子に座る彼の膝の上に乗り上げて、もぞもぞと移動している。
「よいっ…しょっ!」
「…カ、カムイ?」
「さびしいときは、ぎゅーーーってしてくれるって、カミラおねえちゃんがいってたの。だから、カムイも、マークスおにいちゃんをぎゅってするの。いや……?」
「……いやではない、ぞ。ああ、嫌じゃない」
「ぎゅーー…おにいちゃんには、カムイがいるよ」
なんともかわいらしいことに、腕の中にすり寄ってきたカムイに、マークスは戦のことを思い出して泣きそうになっていたことなど忘れて、カムイを抱き締めた。この腕の中にあるぬくもりが、とてもいとおしい。マークスに安らぎを与える存在が、ひたすらにいとおしい――………。
「……マークスさん、マークスさん。もう、朝ですよ」
「…………ん…?」
「マークスさんがお寝坊なんて、珍しい。よほどお疲れだったのですか?あ、頬に髪の痕がついてますよ……ふふ」
「……む」
マークスは、誰かに身体を揺らされて、目を覚ました。
まだはっきりとしない視界の中、マークスは自分の頬に張り付いていた髪を避けて、目の前で微笑む女性を見る。
その女性は、ほかでもない、マークスにとっていちばん大切で、守りたいと思う女である。
そんな女性こと、カムイの腰をマークスは抱き寄せると、彼女を自らの隣に横たわらせる。
「………いつの間にそんなにいい女になったのだ、カムイ」
「……………へ!?え!な、なんですかいきなり!?」
「…突然でなければ、日々私がおまえに思っていることも言ってはならぬか?私は常々、おまえが私を虜にして止まぬ女だと、思っているのだが」
「え、あ、えっ…!も、もう!マークスさん寝ぼけているんじゃないんですか!?」
「……ずいぶんとひどいことを言ってくれるな…そんな口を叩いていて、いいのか?」
「もーーーっ!起きて!起きてください!あああっ、ど、どこを触っているんですか…!」
「……夫が、妻の身体に触れてはいけぬか?」
「い、い、いけなくないですけどっっ!いまはだめです!おあずけ!」
「………くっ、くくくくっ……」
腕の中から抜け出そうと、もぞもぞともがいているカムイの姿に、マークスはつい笑ってしまう。
さきほど、見ていたものは、マークスのかつての姿だったのだ。もう、十何年前ほどになるだろうか。いまや、紆余曲折あって、カムイは妹ではなく、彼のいとおしい妻として、隣にいる。
そういえば、夢の中で見たカムイの姿は、いまとはすこし違う、とマークスは彼女をうしろから抱き締めながら、ほくそ笑む。
「……昔のおまえは、私の腕の中にむりやり入ってきて、抱っこをせがむ子どもだったのにな。いまや恥ずかしがってそんなこともしてくれなくなって……とても残念だ」
「い、い、いつの話を…!」
「……そうだな。おまえが五つの歳の頃、であろうか」
「そ、そんな昔のこと、覚えてないです!」
「私はよく覚えているのだが……さみしいな」
「うっ、そ、そんな声で言われると……」
「はは……」
いまや、カムイはもうじき二十歳になる頃である。
マークスはカムイと十ちかく歳が離れているものの、これまでに培ってきた絆があるからなのか、ふたりの間で歳の差はあまり感じていないようであった。
マークスの言葉を受けて、こちらを振り向いたカムイに、彼は瞳を細めながらそのすべすべの頬に手を這わせる。
「さあ……カムイ、キスをしてくれないか。おまえの愛らしいその唇で…私にキスを与えてくれ」
「マークスさん…………んっ」
「ん………」
マークスの長い前髪をかき分けて、カムイは彼の額、頬に唇をおとし、そして、唇にくちづけていく。
こうして求められると、カムイが断れないことを、マークスは知っているのだろう。
星界のとある部屋に、あたたかな光が差し込んでくる。暗夜王国では感じることの無かった、朝の光だ。その光を受けながら、マークスはカムイの腰を強く抱いた。
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書きあがってから、前回北の城塞時代のマクカムで、カムイちゃん風邪っぴきだったことに気が付きました…相変わらずのボキャ貧っぷり!
お読みいただきありがとうございました。